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チマ・チョゴリ切り裂き事件

 

概要

 チマ・チョゴリ(朝鮮半島の伝統的な女性の民族衣装を指す言葉)切り裂き事件(いわゆる、チマ・チョゴリ事件)とは、朝鮮学校の制服であるチマ・チョゴリを着て通学する女子生徒が標的にされ、チマ(スカート)やチョゴリ(上衣)を刃物で切り裂かれた事件を指す。特に、1994年4月から6月にかけて、朝鮮学校生徒に対する暴力や嫌がらせが日本全国に相次ぎ、横浜の東急東横線綱島駅ホームで、神奈川朝鮮中高級学校に通う女性生徒が、後ろから来た若い男にチマ・チョゴリを引っ張られた上、背中や腹などを殴られ市内の病院に入院するという事件(1994年6月24日)や「学校を爆破する」「朝鮮へ帰れ」などの暴言や脅迫電話などがマスコミによって報じられたことがある。そのような朝鮮学校生徒をターゲットにしたチマ・チョゴリ事件を考えるとき、北朝鮮をめぐる国際情勢にその原因があるとする傾向が多くみられる。北朝鮮の準中距離弾道ミサイル「ノドン1号」の試射(1993年)や核開発疑惑(1994年)、2002年9月17日、日朝首脳会談で北朝鮮が国家として正式に日本人拉致を認めたこと等が、マスコミの報道によって明るみになったことが契機となり多発化している傾向があるからだ。これら暴力事件を新聞各社は精力的に報道した。だが一方で「事件は自作自演ではないか」と匂わすような記事が雑誌に掲載されたり、ネット上に書き込まれ、波紋を呼んだこともある。 
 チマ・チョゴリ事件には「朝鮮学校」=「北朝鮮」というレトリックを克服できていない点、ジェンダー秩序の影響下における社会のジェンダー権力を握っている集団によるジェンダー差別が潜んでいる点が本質的問題点の一例として挙げられる。 
 日本による朝鮮半島への植民地支配と政策によって、日本への移住を強いられた人々とその子孫にあたる在日コリアンが植民地時代当時に否定された自らの言語や文化を取り戻し、祖国への帰還を願い、解放後直ちに自らの手で国語講習所を各地につくり、民族教育の取り組みを行ったことが現在の朝鮮学校の起源といえる。このような朝鮮学校の歴史的背景が理解されず、「朝鮮学校」=「北朝鮮」というレトリックに陥り、情勢と連動するかたちで事件が発生している傾向があると言える。 
 次にチマ・チョゴリ事件はその名称が示す通り、チマ・チョゴリを着る女子生徒を対象にした事件である。朝鮮学校は民族的アイデンティティーの育成を存在意義として掲げている。そのため制服としてチマ・チョゴリという民族衣装を適用するが、女子生徒に限られている。ここには民族的アイデンティティーを表すという意味で作られている制服が女子学生の制服にのみ適用されるというジェンダー化の傾向が現れている。これは一般的なジェンダー秩序の影響があるといえ、主に女性を対象とする様々な犯罪―DV、レイプ、セクハラなど―と同じ根を持つ、社会のジェンダー権力を握っている集団によるジェンダー差別でもあると言える。さらに、朝鮮学校の生徒たちは、子どもという年齢的に社会的弱者ともいえるため、チマ・チョゴリ事件は、民族差別にジェンダー差別、年齢差別など、様々な要因が複合的に絡み合っている問題として理解すべきである。

参考文献

・国際高麗学会日本支部『在日コリアン辞典』編集委員会、『在日コリアン辞典』、明石書店 2012年 
・金武義「チマ・チョゴリ切り裂き事件の疑惑」宝島30、1994年12月号 
・朴三石『教育を受ける権利と朝鮮学校  高校無償化問題から見えてきたこと』日本評論社 2011年   など