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​Interview

身近な在日コリアン

 のライフヒストリー

◆自分をちゃんと見守ってくれる存在=大地

 
―――(参加者)全体の感想になるんですが。正直元々、整体のイメージがお金を稼ごうとする人の印象が強くて、でもシニさんはそうではないと接してわかっていたので、どんなバックボーンで仕事をされて来たのかを聞きたかったんです。あとは、私は仕事に対して、イライラ、不安など、ネガティブなイメージが多いんですけど、独立しようとする人など、仕事に対して前向きな気持ちってどうやったら持てるんかなって。怖くないんかなと。それを今日聞いて学び取りたかったんです。それで一番残ってるのは「整体は求められてる仕事で、言語を介さない、暴力を介さない」ってところです。

大事なことを付け加えると、僕が「鄭信義 チョンシニ」っていう本名で仕事したり、1000軒に挨拶できたのも、それを支える「大地」があるからです。それが無ければ、劣等感を持ったりつぶれてたりしてたと思います。「マーラーカオが詰まりました」って言ってたときのように、僕は無価値な人間やと思って自分を否定しつづけて生きて来てたと思うし。

 

僕は、大地っていうイメージなんですけど、自分が信頼出来て、自分をちゃんと見守ってくれてる存在がいるっていうこと。ともに一緒に人生を歩んでくれる人がいるっていうこと。ともに学んで、歩める場所があると、人間そうそうぶれないと思うんですよ。やっぱり犯罪を犯すのは孤独からだと思いますし、人を差別したりとか、悪口言うのも、なにかその人の中の劣等感とか孤独感からやと思います。言ってる人は、自分で吐きつつ、自分も傷ついてるのはわかってるんですよ、どっかで。

 

全身全霊をもって受け止めてくれる存在がいるってだけで、それだけで僕は自由になれるんじゃないかなと。僕は運がいいと思います。たまたま、自分を支えてくれるものに出会ってた。それは先生であったり、家族だったり、環境すべてなんですけど。

 

◆何が問題なのか?-浄土論から学ぶ

 
―――(参加者)自分が歩んで来なかった経験ばかりでとても勉強なるお話しでした。質問なんですが、整体の店舗をチェーン展開すると儲かるけど、自分自身や従業員の搾取にもなるので、続けられない。次の新たな選択肢として「学校」を選んで、その方向性は間違いなかったけど、やっていく中で時期的に「まだ早い」となって一旦休むことにしましたよね。今後、具体的にやりたいことがあるんでしょうか?

あります。方向性は間違いなく変えずに、浄土真宗大谷派の浄土論を勉強しなおしたいなと。やっぱり、世界中のすべての問題が、真実がきちんと見えてないと、なにが課題なのかすら見えてない。現代の多くの人はいろんな問題に悩むわけなんですけど、それが漠然とし過ぎて、明確な答えを求めるわけでもなく、もやもやしたものを抱えてるだけなんじゃないかなと思います。

 

問題は、「問題だ」とわかった瞬間、答えは見つかるんですよ。問題がわからない、というのは同時に、答えもわからないということです。暗中模索のように、あれは問題じゃないか、これも問題じゃないかとしている。でも、実は仏教のなかに書いてるんじゃないかと思ってます。お釈迦さんは、まず国を捨てたんですね。それで悟りを得ようとした。僕たちは、国を捨てるところから始めていかないといけないのかもしれない。誰しもが、国に固執してから問題を提起し始めてるでしょ?そもそも真実っていうのが、国に固執するところに無いっていう観点で問題を探さないといけないかもしれない。

 

そのために、浄土論というのは、今の時代にマッチしていると思います。みんなが国を求めてるんですよ。でも、それがどんな国かわかってない。真実はものすごく簡単な一つです。「いのちが生まれ、いのちが育まれていく場所」が「くに」であり、大地です。それをもっと明らかにしていかなきゃならない。命が育たない場所ってわかるでしょ、産業プラントの疲弊した土地では作物は育たない。そういう感覚をもっと研ぎ澄ませていかなければいけないんじゃないかと。というのを、もうちょっとちゃんと明確にしていきたいというのが、今の考えです。

――――(参加者)経営や学校など、経済活動する上でも、自分の理念の中に今おっしゃったような浄土論などがあるから、新しいことを始める前には、それをまず、いま学びなおしたいということですか。

そうですね。お金はけっきょく、あとから付いてきますからね。たとえば、ハナの会にボランティアに行き始めたのは、お金を必要としてたわけじゃなかった。でもハナの会で、そこの高齢者の人たちが、足が弱ってるからっていうので、「この体操してみたらどうですか」と提案した。そしたら奇跡的な数値が出たんですよね。それを本にしたら、お金になった。だから、後からお金になるイメージで、先に利益を計算するわけではない。お金で物事を考えるのは癖になってしまってると思うので、そこは頭をほぐして、そこから自由に考えると、もっと楽に生きれるんじゃないかと思います。

――今日は、ほんとに長いあいだお話していただき、ありがとうございました(一同)。

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