もやもやQ&A 「本名」について(No.002)
Q.名前をハングル読みすると、本国では一般的ではない響きになります。 けれども、これが「本名(民族名)」なのでしょうか?(No.002)
A. 結論からすると一般的ではない響きの名前も「本名(民族名)」になると私は考えます。現在の在日コリアンは多くが民族名とは別に日本名を持っています。(もちろん日本名を持たず、民族名で生活する在日コリアンも多くいます。)多くが日本名を名づけられ、生まれた時が日本名で呼ばれてきたと思います。ではなぜ日本名を名づけたのでしょうか?両親の考え方それぞれですが、日本で生活するから、そして名前を理由に日本社会で差別を受けないようにするためという意見を聞くと思います。 では次になぜハングル読みの響きが、本国と異なるのでしょうか?日本名を名づける時にハングル読みについて考慮しなかった結果だと思います。中にはハングル読みの民族名を知らないまま生きる在日コリアンもいます。ハングルを勉強して初めて、民族名に気づく人もいます。 しかしながらパスポートではハングル読みの名前が表示されます。(外国人登録証は漢字のみですが。)つまり響きや実感に関係なく、民族名が公的な名前として認められている、だから本名になると思うのです。 悲しいのは在日コリアンが日本名を使う理由を知らずに、ハングル読みを「変な名前」と笑う日本人、「そんな名前は韓国にない」と言い切る韓国人の存在です。(31/女/兵庫)
A. 民族名かどうかと言われると、民族名であると考えます。ただ、いわゆる日本的な名前を第一に考えて名付けられたのでしょうね。生まれた頃から慣れ親しんだ名前を急に民族名で呼ばれたり、使ったりすることに抵抗を感じてしまうのは当然のことだと思います。日常生活において、日本には日本人しかいないといった風潮を強く感じていまして、そういった中僕は日本社会で民族名で生きることは、その風潮に対するアンチテーゼであったり、在日コリアンの存在、存在の歴史性を伝える手段として民族名を名乗ることは意味のあることだと思っています。個人的な経験として、民族名で人から呼ばれることは最初とても違和感がありましたけど、長く呼ばれてくると、慣れが生まれ、親しみがわき、今ではハングル読みでも「本名」なったという実感があります。(S.Y/34/男/大阪)
A. 名前とは、自分が関係を持つ様々な人々から呼ばれることで初めて意味を持つものだと思います。あなたの名前の呼ばれ方が、名前を呼ぶ相手との関係そのものを表していると言ってもいいかもしれません。 親しい仲間に呼ばれる名前があり、その名前にあなた自身が愛着を持っていれば、その響きが一般的かどうか、民族名か日本名かはそれほど大きなことではないかもしれません。 自分自身が名乗り、親しい仲間に呼ばれることに愛着をもつことのできる名前であれば、それがあなたの名前なのだと思います。(C・D/29 男/兵庫)
A. 人々に付けられる名前には、それぞれの国々の社会・文化的特徴が反映されています。名前にも流行があるということをご存知でしょうね。例えば、アメリカの女優さんの名前を見ても30 代-40 代ではジェニファーという下の名前が何人もいます。韓国もそれと同様で、1980年代生まれの女性にはソンヨン、ジウォンのような名前が多いらしいです。在日の場合もそのような傾向があるのです。日本語での読みと韓国語での読みが同じように聞こえる名前、例えば、麻里、由美のように、付ける工夫がされてきましたね。しかし、在日コリアンの名前がすべてそのように付けられるわけではありません。トリム字(돌림자)という族譜上の付け方(家系図上の同じ世代で決まった漢字を名前に使うこと)にこだわる方もおられるでしょうし、様々な工夫があるはずです。そこで考えてほしいところは、民族名ということの意味ですね。 名前の響きは、名前を現す言葉が使われる環境と関係しますので、韓国国内流もあるはずですし、在日コリアン流、在米コリアン流があるはずです。響きが多少違っても、それは私たちが持っているバックグラウンドをあらわしているということで、むしろその違いは大切といえると思います。重要なのは、日本社会において通名を使わせられている状況の下で、本名(民族名)をどのように使っていくかという考え、姿勢、こだわりを持つことではないでしょうか。名前の付け方は、時代によって変化しつつあります。しかし、その意味は在日コリアン一世から引き継がれている歴史と関係します。もし、韓国で生まれ育ってきた人から、名前の響きがユニックですねと聞かれたときは、在日コリアンとして民族名を持ち続けてきたことの意味、その延長線上で名前の付け方に多様性を持ちながらも、本名として大事にしてきた歴史だけは説明できるようにしていけたらいいなと思います。 (J.H/30/女/大阪(or 韓国)
A. 日本で生活することを前提に、日本語の響きのみを考慮して両親が付けられた名前であれば、日本語の読み方が本来の読み方であると、思います。しかし同時に、朝鮮半島にルーツを持つものとして、(一般的な響きでないにしても)ハングル読みした自分の名前を「本名」と考えることも自然(本来的)なことだと思います。つまり、どちらも名乗られる価値と意義があるわけです。とはいえ、これでは選べません。そこで提案ですが、①名付け親である親と話をしてみる。もしかすると、響きがユニークなだけで、ちゃんと朝鮮文化としての意味合いも込めてつけているかもしれません。または、通名としての日本名とは別に、ハングルの名前があるかもしれません。このケースはたまに見かけます。②日本語での自然な響きを尊重して、名前はそのまま日本語の発音を使い、名字は朝鮮のものを使う。これによって「朝鮮語の名字」+「日本語の名前(発音)」というミックスされた名前が出来上がります。これは日本人からしても韓国人からしても珍しいものであり、在日コリアンであることの一種の証にもなります。(L・M/28/男/兵庫)
A. 在日コリアンの、特に青年は、多くが日本名を名乗っているといい、中には(生まれた時から)民族名をもたない人も沢山います。そのためもあり普段使っている名前をハングル読みすると、本国(あなたがいう本国とは、朝鮮半島ということでいいのでしょうか?)で一般的でない響きになることは、よくあることです(このテーマは小説にも書かれています。ダブルで日本国籍をもつ在日コリアンの鷺沢萌さんが、韓国留学をした時の経験をもとに書かれた『君はこの国を好きか』では、主人公の在日の友人である「純代」(「すみよ」)さんが韓国留学をして、はじめて自分の名前がハングルで「순대スンデ」と読むことを知るというシーンがあります。ちなみに「スンデ」とは、韓国の春雨等を詰めて豚の血でつくったソーセージ)。 さて相談内容です。ちょっと短すぎて読んでもよくわからないところがありますが、「普段日本名をつかっているのだが民族名(ハングル読み)にすると本国では違和感がある感じになってしまうが、それが自分の本名なのだろうか?」という意味でよろしいでしょうか?そうだとすれば、ポイントの一つは「本名」とはなにか?ということになります。これは難しい問題です。なぜなら「本名」とはなにか?という問いは、人それぞれ違うと思うからです。その人が何を「本名」だと思うかによって、答えは変わってきます。もともと「本名」とは「通名」と対になってつかわれてきています。つまり「普段使っている名前」=「通名」であり、それとは区別された「本当の名前」=「本名」がある、という考え方です。人によっては「本名」=「民族名」、「通名」=「日本名」と考えたり、あるいは「本名」=国・自治体といった公的機関が証明する名前と考えたり(この場合、その公的機関が日本国である場合と、韓国や北朝鮮政府である場合と、その両方である場合もあるでしょう)、または親が付けた名前、とする人もいるでしょう。私はどれも尊重しますし、最終的には本人の選択の問題だと考えています。私としては「本名」とは、自分が「本名」だと思う名前のこと、だと考えています。なので上に出てきた色んな名前(民族名か否かや、公文書や親の名付けなど)を根拠にしても参考程度にしてもいいだろうし、場合によっては自分で自分の名前をつけなおすのも大いにアリだと考えます(じっさいに芸名で生きる芸能人をはじめ、そういう人生を生きる人だっているでしょう?)。さて、あなたはあなたのいう「本名」をどういうものだとお考えでしょうか?(変な質問かもしれませんが、それ次第で答が変わってくると思います)もしあなたも「本名」を自分で決める名前とするならば、それはあなたの自由ということになります。したがって質問の答えは「はい」であり「いいえ」でしょう。普段名乗っている名前を本名としてもよいでしょうし、公文書に記載された名前などを根拠にしても参考にしてもしなくても、民族名を名乗っても名乗らなくても、自由に名前をつくってもよいのです。もしあなたが「本名」=「民族名」のみを指すのであれば、相談内容の答えは「そうだ」ということになるかもしれません。ただ、この場合でも「民族名」を自分で好きにつける、なんて選択肢も大いにあると思いますよ(上の「純代」さんは「スンデ」と名乗るだけでなくほかのコリアンネームを名乗ってもよいわけです)。本名にしていますが理由は昔から使ってきたというだけではありません(気に入ってもいますが)。私は民族名を名乗る自由がなければ在日コリアンの名前を自由になる状況はやってこないと思っているのです。そして民族名をじっさいに使って生きるという選択をすることが、少しでも民族名をつかいやすい状況をつくるのにささやかながら貢献できないかと考えているのです。デメリットもメリットもあります。デメリットとしてはアルバイト先で日本名を使うよう強いられたことですが、メリットは自分が在日であるということを公言することで少なくない方に理解を得られ新たな出会いも得られたという実感があるからです。(R.Y/31/男/東京)
A. 本国の方にそう言われたのでしょうか?在日コリアンにとって名前とは、創氏改名にはじまり現代までも、さまざまな歴史があり問題があると思います。 多くの在日コリアンは、今3 世4 世、5 世の世代へと移っていっています。一概には言えませんが、多くの在日コリアンの人たちは「民族教育」を受ける機会がないまま育ちました。その中で、漢字の意味をもって、または知らないが故、日本の言葉の響きをもって名前をつける方もいらっしゃると思います。中には「差別」から逃れるために、コリアンだとわからないようにあえて、日本でよく使われるような響きの名前をつける方もいらっしゃったでしょう。そんな在日コリアンの背景、存在を本国の方々が知らないが故の「本国では一般的ではない響き」という言葉だと思います。名前はその人が何者か、どんな民族のルーツをもつ人なのかをあらわすものです。ウリマルである響きの名前を大切にしてください。 (J・K.34 才.女.大阪)
A. 本名(民族名)としてあるにふさわしい名前とは何か(ご自身にとっても、他者にとっても)、ということにつながる問いなのではないかなと思います。本国では一般的ではない響き、ズレそのものも、ご自分のものではない感覚が質問にはあるように感じます。(違っていたらごめんなさい)そのズレとの折り合いは、自分自身のアイデンティティーをどこに置くのか、ということと在日の置かれている歴史的経緯を知る中で出来上がっていくものではないかな、と思います。(K・T/29/東京)
A. 日本において、多くの人が自身の名前に漢字を持っていると思います。その漢字をハングル読みしたものが民族名ということになります。在日コリアンの名前にも、漢字を持つ名前ということに関して、韓国・朝鮮語で呼ぶことをはじめから意図して付けられた名前=本名と、日本語で自然な響きを持つ(日本の名前として一般的と考えられる)名前=日本名、その両方を持ってる人(使い分けている人)がいますし、そのどちらか一方だけ、ひとつの漢字名のみを持つ人もいます。本国で一般的でない、ということは後者の、日本語の響きが自然となるようにつけられた、いわゆる日本的な名前なのだと思います。当人にとってはこれまで生きてきた日本語読みの名前からすると、その漢字をハングル読みして「本名」と言っても違和感がありすぐには馴染めないと思いますし、もちろん日本語を意識して付けられた名前なので、本国では一般的ではなく不自然に感じられるということもあるでしょう。しかしながら、名前というものは結局は記号にすぎないわけで、それがたとえ一般的でなくとも悲しむことはないと思います。一般的な響きではなくとも、確かにあなたの「本名」ですし、そのこと自体が在日コリアンの特異性を表すものですし、そのことを周りにどうとられるかでなく、自分がどう捉えるのかだと思います。(c.h/32/男/大阪)
A. 名前をつけた理由でそれぞれ違いがあるとは思いますが、たとえば両親が日本風に名前を付けた方も多いので、その名前をハングル読みにすると一般的ではない響きになるのが多いと思います。もともとハングル読みで付けられた方も多いので自然な響きの人もいます。また、日本名とハングル名とそれぞれ漢字が違う人やまったく違う人も多いです。私の場合では、日本風によむと自然ですが、ハングルで読むと男の人によく使われる響きなので珍しいといわれることもありますが、聞く相手によってはきれいな名前ですね。ともいわれます。単純にハングル読みにするので民族名=本名になると思います。【みかん/30代/女/大阪】
A. 名前とは本来、その人を表す記号にしかすぎないものだと思います。どんな響きでもあなたが本名だと思えるのならそれが本名だと思います。問題は今の名前を本名と思えるかどうかです。恐らく、ご両親はハングル読みを意図せず名前を付けたと推察されますが、その意味も含めつつ、あなたが自分の名前にどんな意味を込めるのかが大切だと思います。ちなみに私の名前も同じケースです。そして私は一般的にない響きの民族名を選んで名乗っています。しかしながら、それが本名かと問われればそれは分かりません。あくまで選んでいるという感覚です。もちろん、そこに意味を込めているからです。在日コリアンの名前は様々なケースが存在します。そしてどれも正解はないと思います。自分自身の中に意味を見出せたらそれが答えではないでしょうか。(W・H/32/男/大阪)